食品工場の洗浄水を見直す|UFB(ウルトラファインバブル)という発想

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食品工場の洗浄について議論するとき、話題はたいてい品質部門のものになります。

しかし損益の視点で見ると、位置づけはまったく変わります。洗浄している時間は、ラインが止まっている時間だからです。

つまり洗浄工程は、衛生のテーマであると同時に、設備稼働率のテーマでもあります。

まず結論

食品工場の洗浄は、①粗洗い ②本洗浄 ③すすぎ ④仕上げ・乾燥の4段階に整理できます。それぞれ時間が伸びる要因が違うため、一括して「洗浄時間」と呼んでいる限り、どこを詰めればよいかが見えません。

そして多くの現場で最初に選ばれるのが薬剤を強めるという打ち手ですが、これにはすすぎ時間の増加・排水処理負荷・材質への影響という3つの副作用が伴います。総時間で見ると、必ずしも短縮になりません。

この記事では、段階別に時間の伸びる要因を特定したうえで、薬剤と機器に続く第三の軸——水そのものにアプローチするという考え方を整理します。あわせて、製品を評価するときの「気泡数表示の読み方」と、認証制度の位置づけについても触れます。


◆この記事でわかること

 

  • ・洗浄時間をライン停止時間として捉え直す視点
  • ・洗浄4段階と、それぞれ時間が伸びる要因
  • ・薬剤を強める方向に伴う3つの副作用
  • ・複雑形状部という、洗浄の最大の難所
  • ・すすぎ水量と排水処理がセットで効いてくる構造
  • ・気泡数表示の読み方と、認証制度の位置づけ

 


◆洗浄時間は、そのままライン停止時間

 

生産計画上、洗浄は「生産していない時間」に分類されます。段取り替え、日常洗浄、定期洗浄——いずれもラインは動いていません。

この時間を短縮できれば、次のいずれかが実現します。

  • ・同じ人員・同じ設備で生産量を増やせる
  • ・生産量を変えずに操業時間を短縮できる
  • ・段取り替えを増やし、小ロット多品種に対応しやすくなる

 

3つ目は、多品種化が進む現在では特に価値が大きいはずです。洗浄時間の短縮は、生産の柔軟性そのものに効いてきます。

もちろん、洗浄の水準を落として時間を縮めるという話ではありません。水準を維持したまま、どこの時間を詰められるか——それが論点です。


◆洗浄を4段階に分けて見る

 

 

段階 目的 時間が伸びる主な要因
① 粗洗い 大きな残渣を先に除く 残渣が乾いてから着手している
② 本洗浄 薬剤と物理力で付着物に働きかける 接触時間の確保、複雑形状部への到達
③ すすぎ 薬剤と汚れを流し切る 泡切れの悪さ、残留確認の手間
④ 仕上げ・乾燥 水分を除き、次の生産に備える 水切れの悪さ、滞留水の除去

 

重要なのは、この4段階が一方向に影響し合うことです。①が甘いと②の薬剤負担が増え、②で薬剤を増やすと③が延び、③が不十分だと④の確認が増える。後ろの段階で前の条件は取り戻せません。


◆粗洗いは「乾かさない」が本質

 

4段階のうち、もっとも軽視されやすいのが粗洗いです。薬剤を使わないため「洗っている」という実感が乏しく、生産終了直後の慌ただしい時間帯に発生するからです。

しかし、付着物には共通の性質があります。タンパク質や糖質を含む残渣は、乾燥すると表面に固着し、その後の工程で落としにくくなる——これが洗浄時間を押し上げる最大の要因です。

粗洗いは水だけで行う工程であり、そのぶん水の条件が結果に効きやすい場面でもあります。ここが、後半で扱う「水そのものを見直す」という話につながります。


◆最大の難所は「複雑形状部」

 

平面はどんな方法でも洗えます。時間を食うのは、いつも同じ場所です。

  • ・コンベアベルトの継ぎ目・裏面:分解しないと届かない
  • ・配管の継手・バルブ内部:流れの死角ができやすい
  • ・パッキン・シール部:隙間に残渣が入り込む
  • ・ホッパー・シュートの角部:物理力が届きにくい
  • ・センサー・治具のまわり:形状が入り組んでいる

 

こうした箇所では、ブラシなどの物理力が届きません。結果として「薬剤の接触時間を延ばす」以外の手が少なくなり、そこが洗浄時間の下限を決めています。

言い換えれば、洗浄液そのものが持つ性質が、もっとも効いてくる領域がここだということです。


◆薬剤を強める方向の3つの副作用

 

① すすぎ時間が延びる

濃度を上げるほど、洗い流すのに必要な水量と時間が増えます。②で稼いだ時間を③で失うという構図になりがちです。

② 排水処理の負荷が上がる

工場は排水基準の順守が前提です。使用量の増加は、そのまま排水処理設備の負荷とコストに跳ね返ります。

③ 材質への影響

ステンレス以外の部材、樹脂パーツ、パッキン類は、薬剤の種類と濃度によって劣化が早まる場合があります。部品交換の周期は、間接的な洗浄コストです。


◆「水そのものにアプローチする」という発想

 

洗浄工学では、洗浄力を「化学的な力(薬剤)」「物理的な力(流速・ブラシ)」「温度」「時間」の組み合わせとして扱うのが一般的です。ここに第五の軸として「水そのものの状態」を置くのが、ウルトラファインバブル(UFB)という考え方です。

気泡のサイズは国際規格で定義されています。ISO 20480-1:2017では、直径100μm未満を「ファインバブル」と総称し、1〜100μmを「マイクロバブル」、1μm未満を「ウルトラファインバブル」と分類しています。髪の毛の太さがおよそ80μmですから、その80分の1よりさらに小さい世界です。

この大きさになると浮力がほとんど働かず、水面に浮上しないまま水中にとどまり続けます。目に見えないため、外見は普通の水と変わりません。皮脂やタンパク質由来の汚れに吸着しやすいと考えられていますが、メカニズムを断定できる段階ではありません。

除菌や殺菌を行うものではありません。工場の衛生管理は、各社が衛生管理計画および関係法令に沿って実施するものであり、水の状態を変えることがそれを代替するものではありません。効果の感じ方には個人差があります。

泡のサイズによる性質の違いは、ファインバブル・マイクロバブル・UFBの違いを解説した記事で整理しています。


◆「◯億個」という表示をどう読むか

 

UFB製品の比較では、気泡の個数濃度が前面に出ることがあります。ここは工場の購買判断で誤りやすいポイントなので、正確に書いておきます。

気泡の個数濃度は、水圧・水温・測定機器や方式・採取距離とタイミングによって値が変わります。したがって測定条件が示されていない数値どうしを並べても、比較にはなりません。仕様書を評価するなら、数値そのものより「測定条件が開示されているか」を見るほうが確かです。

関連して、一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)による製品認証登録制度があります。ファインバブルを利用した製品について、性能測定方法が規格に適合しているか、効果判定が妥当か、品質管理が維持されているかを確認し、マークを表示する制度です。

ここで誤解しやすいのですが、この制度は測定方法の妥当性と品質管理を確認するものであって、製品間の性能の優劣を決めるものではありません。判断材料の一つとして位置づけるのが適切です。


◆3つのアプローチを並べて比べる

 

 

アプローチ 効きやすい段階 制約
薬剤を強化する ② 本洗浄 すすぎ時間・排水負荷・材質への影響
設備を更新する ② 本洗浄・③ すすぎ 投資額とライン停止を伴う。分解性の設計に依存
水の状態を変える ① 粗洗いを含む全段階 効果の見え方が間接的。設置条件と検証の設計が要る

 

3つ目の特徴は、段階ではなく「水が通る場所すべて」に関わる点です。ただし工場では、導入前に検証方法を設計しておかないと評価ができません。ここは家庭とは決定的に違う部分です。


◆工場で検討する場合の確認事項

 

① 給水系統の構成と水量

受水槽の有無、系統の分かれ方、ピーク時の流量。工場は住宅と桁の違う水量を扱うため、ここが最初の関門になります。

② 対象範囲をどこに絞るか

全系統か、特定ラインか、洗浄室のみか。範囲を絞るほど検証しやすくなります。

③ 検証方法の設計

導入前後で何を比べるのか(洗浄時間・薬剤使用量・拭き取り検査の結果など)を、着手前に決めておきます。ここが曖昧だと、導入後に評価ができません。

④ 既存の衛生管理計画との関係

既存の手順や記録を置き換えるものではない、という位置づけを明確にしておきます。

⑤ 止水できる時間帯

設置作業は止水を伴います。生産計画との調整が前提になります。


◆よくある質問

 

Q. 食品工場に業務用として導入できますか?

ウルトラファインバブルフレスカは住宅の水道元栓に設置する製品として設計されています。工場は水量・系統・求められる仕様が住宅とは大きく異なるため、そのまま適用できるとは申し上げられません。まず条件を伺ったうえで、設置可否の確認からご案内しています。

Q. 洗浄時間や薬剤使用量はどれくらい減りますか?

「◯割減ります」といった断定はできません。汚れの種類、設備形状、洗浄条件によって結果が変わるためです。数値をお約束する形でのご案内はしておりません。

Q. 除菌や殺菌の効果はありますか?

ありません。ウルトラファインバブルは気泡のサイズによって定義される物理的な状態を指すもので、除菌・殺菌を目的とした技術ではありません。

Q. FBIAの認証を取得している製品を選ぶべきですか?

認証制度は測定方法の妥当性と品質管理を確認するものであり、製品間の性能の優劣を示すものではありません。認証の有無だけで判断するのではなく、測定条件の開示、気泡サイズの明記、サポート体制など複数の軸で評価することをおすすめします。

Q. 電源やフィルターは必要ですか?

フレスカは水圧を利用して気泡を生成する構造のため、電源は不要で、フィルターなどの消耗品もありません。ただし工場での運用要件は住宅と異なるため、条件のすり合わせが前提になります。


◆まとめ

 

✔ 洗浄時間はライン停止時間であり、生産の柔軟性に直結する
✔ 洗浄は粗洗い・本洗浄・すすぎ・仕上げの4段階に分けて見る
✔ 段階は一方向に影響し、後ろの段階で前の条件は取り戻せない
✔ 粗洗いの本質は「乾かさない」こと
✔ 洗浄時間の下限を決めているのは、物理力が届かない複雑形状部
✔ 薬剤強化には、すすぎ時間・排水負荷・材質影響という副作用がある
✔ 気泡数は測定条件で変わるため、条件の開示があるかを見る
✔ FBIA認証は測定方法と品質管理の確認であり、性能の優劣を示すものではない

薬剤を強める前に、「洗浄液が届いていない場所」と「乾かしてしまっている工程」を潰すほうが先です。期待値の持ち方については、効果なしと言われる理由を検証した記事もあわせてご確認ください。

ウルトラファインバブルフレスカは、水道の元栓に設置する全館型のウルトラファインバブル発生装置です。接続規格はG3/4、外形全長は約80mm。水圧を利用する構造のため電源が不要で、消耗品の交換も前提としていません。

ただし本製品は住宅向けに設計されたものであり、工場のように水量・系統・仕様が大きく異なる施設では、そのまま適用できるとは限りません。給水系統の構成、必要水量、対象範囲の絞り方などを伺ったうえでのご案内となりますので、まずは条件のご相談からお気軽にお問い合わせください。

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