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「ウルトラファインバブルが弾けるときのエネルギーで、汚れをはがす」
そんな説明を見かけたことはないでしょうか。力強く、イメージしやすい説明です。
ただ、ここにはよく考えると噛み合わない部分があります。ウルトラファインバブルの特徴は「長く残ること」だと説明されているのに、同時に「弾ける」とも言われている。どちらなのでしょうか。
まず結論
キャビテーションとは、液体の一部で圧力が下がったときに空洞(気泡)が生まれ、圧力が戻る場所へ運ばれてつぶれる現象です。この「つぶれる」ことを圧壊と呼びます。
圧壊は2つの顔を持ちます。ポンプの羽根や配管を削ってしまう害としての顔と、超音波洗浄のように利用される顔です。
ではウルトラファインバブルとの関係は。整理すると2つあります。①つくる手段として——流れを絞って圧力を下げる方式は、キャビテーションと同じ物理を使っています。②作用の説明として——ここが問題です。
ウルトラファインバブルは「つぶれずに残ること」が特徴とされる存在です。それが同時に「弾けてエネルギーを出す」と説明されるのは、キャビテーション一般の議論をそのまま持ち込んだ結果であり、確認された説明とは言えません。
◆この記事でわかること
- ・キャビテーションとは何が起きている現象なのか
- ・なぜ機器を傷めるのか(壊食)
- ・なぜ洗浄に使われるのか(超音波洗浄)
- ・UFBとキャビテーションの2つの接点
- ・「UFBが弾けて汚れを落とす」という説明の位置づけ
- ・装置設計という実務的な視点
◆キャビテーションとは何か
水は、温度を上げれば沸騰します。では、温度を上げずに沸騰させることはできるでしょうか。
できます。圧力を下げればいいのです。
高い山の上でお湯が低い温度で沸くのは、気圧が低いためです。同じことが、流れる水のなかでも局所的に起こります。
流路が急に狭くなる場所、羽根の裏側、障害物の後ろ——こうした場所では流れが速くなり、その分だけ圧力が下がります。圧力が十分に下がると、そこで水が気体に変わり、空洞ができる。
これがキャビテーション(空洞現象)です。温度ではなく圧力によって引き起こされる、局所的な相変化だと言えます。
◆なぜ「圧壊」と呼ばれるのか
できた空洞は、流れに乗って移動します。そして圧力が戻っている領域に入ると、周囲から押しつぶされます。
このつぶれ方が、静かではありません。空洞は急激に縮み、その過程で局所的にエネルギーが集中すると説明されます。衝撃波が出る、細い水の噴流が生じる、といった記述が工学分野でなされています。
この現象を圧壊(collapse)と呼びます。
なお、圧壊時にどれくらいのエネルギーが生じるかは、気泡の大きさ・周囲の圧力・液体の状態などによって大きく変わります。この記事では具体的な数値を書きません。条件によって桁違いに変わる量を、一般化して示すことができないためです。
◆2つの顔——「害」としての圧壊
機械の世界では、キャビテーションはまず避けるべき現象として知られてきました。
ポンプの羽根車、船のプロペラ、バルブ、絞り部——こうした部位で圧壊が繰り返されると、金属の表面が少しずつ削られていきます。これを壊食(エロージョン)といいます。
硬い金属が、水によって削られる。圧壊の集中がそれだけの作用を持ちうるということです。振動や騒音、効率の低下を伴うこともあり、流体機械の設計では長く課題とされてきました。
◆2つの顔——「利用」としての圧壊
一方で、この作用を積極的に使う技術もあります。代表が超音波洗浄です。
液体に強い超音波を当てると、圧力が周期的に上下します。圧力が下がる位相で空洞ができ、上がる位相でつぶれる。これを高速で繰り返すことで、対象物の表面に作用を与える仕組みです。眼鏡や精密部品の洗浄工程で広く使われています。
ここで大事なのは、超音波洗浄で使われている空洞が「その場で生まれて、その場でつぶれる、ごく短命な存在」だという点です。
そして、ここが次章の論点につながります。
◆UFBとの接点① つくる手段として
ここまでは素直な話です。
流路を絞れば流れが速くなり、圧力が下がる。圧力が下がれば、水に溶けていた気体が出てきたり、空洞ができたりする。この物理を気泡を生み出す手段として使う方式があります。
旋回流の中心にできる低圧の領域に気体が引き込まれるのも、同じ系統の考え方です。装置の発生方式については 製品スペックの読み方をまとめた記事とあわせて理解しておくと整理しやすくなります。
つまり「気泡をつくる場面でキャビテーションと同じ物理が関わる」ことは、無理のない説明です。
◆UFBとの接点② 作用の説明として——ここが問題
問題は、圧壊を効果の説明に持ち込んだ場合です。
「ウルトラファインバブルが弾けるときのエネルギーが働く」という説明には、次のような論理の飛躍が含まれています。
| キャビテーション気泡 | ウルトラファインバブル | |
|---|---|---|
| 生まれ方 | 局所的な減圧で発生する空洞 | 装置で生成される気泡 |
| 寿命 | ごく短命。すぐつぶれる | つぶれずに長く残ることが特徴とされる |
| 大きさの扱い | 圧力条件で膨張・収縮する | 1μm未満と定義される(ISO 20480-1:2017) |
| つぶれる引き金 | 周囲の圧力の回復 | 何が引き金になるのかが明確でない |
表を見ると、噛み合わなさが見えてきます。ウルトラファインバブルは「つぶれないこと」を性質として語られている存在です。それが同時に「弾ける」と説明されるのは、少なくとも整理が必要です。
では、どう考えるのが正確か
いくつかの可能性が語られています。
- ・マイクロバブル領域の泡は水中で収縮していくとされており、その収縮の過程で何かが起きるという見方
- ・特殊な条件(強い減圧、超音波など)を与えれば、小さな気泡も応答しうるという見方
- ・そもそも家庭の水まわりの条件下で、圧壊と呼べる現象が起きているとは限らないという見方
率直に書きます。どれが実際に効いているのか、確定した説明はありません。ウルトラファインバブルの作用機序については、定量的に評価した研究がまだ限られており、解明が進められている段階です。
「弾けるから効く」という説明は、分かりやすいぶん強い印象を与えます。ただし分かりやすさと確からしさは別です。この記事では、断定できない部分を断定できないままお伝えします。
◆装置設計という、実務的な視点
研究上の論点とは別に、キャビテーションには設備としての意味があります。
圧壊は機器を削る現象でもあるため、水まわりの装置を設計するうえでは望ましくない場所で起こさせないことが求められます。強い減圧を伴う構造ほど、材質や形状への配慮が必要になります。
住宅の水道元栓のように、長期間、止水せずに使い続ける場所ではなおさらです。ウルトラファインバブルフレスカは、水圧を利用し、内部構造による水流の旋回とせん断で微細気泡を生成する構造で、電源も薬剤も使いません。
設置場所ごとの考え方の違いは シャワーヘッド型と家中まるごと型を比較した記事で整理しています。
◆いま言えること・言えないこと
| 言えること | 言えないこと |
|---|---|
| キャビテーションは減圧で空洞が生じ、圧力回復でつぶれる現象 | 家庭の水まわりで、圧壊と呼べる現象が起きているかどうか |
| 圧壊は機器の壊食を招く一方、超音波洗浄に利用されている | UFBの圧壊が洗浄の作用機序である |
| 気泡を生む手段として、減圧の物理が使われる方式がある | 圧壊時に生じるエネルギーの一般的な大きさ |
| UFBは「つぶれずに残ること」を性質として語られている | 何が引き金でUFBがつぶれるのか |
分かっていないことがある——それを書くのは、技術を売る立場としては勇気がいります。ただ、確かめられていない説明で納得していただくことのほうが、長い目で見れば不誠実だと考えています。なお効果の感じ方には個人差があります。
◆よくある質問
Q. 「泡が弾けて汚れを落とす」という説明は間違いですか?
間違いだと断じるものではありませんが、確かめられた説明として断定できる段階ではありません。ウルトラファインバブルは「つぶれずに残ること」が特徴とされる存在であり、圧壊を前提とした説明とは整理が必要です。
Q. キャビテーションは水道管を傷めませんか?
キャビテーションによる壊食は、一般に強い減圧が繰り返し生じる部位で問題になります。住宅の給水系で装置を選ぶ際は、構造・材質・設置条件を確認したうえで判断することが前提になります。
Q. 超音波洗浄機とUFBは同じ仕組みですか?
違います。超音波洗浄はその場で生まれてその場でつぶれる短命な空洞を利用する技術です。長く水中に留まるとされるウルトラファインバブルとは、扱っている現象が異なります。
Q. マイクロバブルは消えると聞きました。UFBも消えますか?
マイクロバブル領域の泡は水中で収縮していくとされています。ウルトラファインバブルについてはどのように、どれくらいで減っていくのかに確定した説明が得られていません。この記事でも時間の数値は扱っていません。
Q. フレスカの内部でキャビテーションは起きていますか?
フレスカは水圧を利用し、内部構造による水流の旋回とせん断で微細気泡を生成します。内部の流れのなかで何がどの程度起きているかを断定的に申し上げることはできません。構造や設置条件については個別にお答えしています。
◆まとめ
✔ キャビテーションは温度ではなく圧力によって空洞が生じる現象
✔ 圧力が戻る場所で空洞がつぶれることを圧壊という
✔ 圧壊は機器を削る壊食を招く一方、超音波洗浄として利用もされている
✔ UFBとの接点は2つ。①つくる手段としては無理のない説明
✔ ②効果の説明として持ち込むと、「つぶれずに残る」という性質と噛み合わない
✔ UFBの作用機序を定量的に評価した研究は限られ、解明が進められている段階
✔ 「弾けるから効く」は分かりやすいが、確認された説明とは言えない
✔ 設備としては、望ましくない場所で圧壊を起こさせない設計配慮が求められる
泡のサイズによる性質の違いは 3つの泡の違いを整理した記事で確認できます。
ウルトラファインバブルフレスカは、住宅の水道元栓に設置する全館型のウルトラファインバブル発生装置です。接続規格はG3/4、外形全長は約80mm。水圧を利用して気泡を生成する構造のため電源が不要で、消耗品の交換も前提としていません。
構造や設置条件、そして何が言えて何が言えないのかを含め、気になる点があればお答えします。ご自宅の水圧や配管によって設置条件が変わりますので、導入前の確認も承っています。
◆参考
- ・ISO 20480-1:2017「ファインバブル技術-ファインバブルの使用及び測定の一般原則-第1部:用語」(2017年6月22日発行 / ISO/TC 281)
- ・JIS B 8741-1:2019(同名の日本産業規格)
- ・一般社団法人ファインバブル産業会「ファインバブルの作用と活用」
- ・安田啓司「ウルトラファインバブルの特性と応用」真空 66巻11号
- ・「ファインバブル技術とその開発動向─半導体洗浄への応用」電気学会誌 138巻7号
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