ウルトラファインバブルはどうやって測定されているのか|見えない泡を数える方法と、その限界

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「1mLあたり◯億個」
「気泡径 平均◯nm」

ウルトラファインバブル製品のスペック表に並ぶ数字です。

ここで一度立ち止まってみてください。ウルトラファインバブルは目に見えません。水は透明なままです。では、見えないものを、どうやって数えたのでしょうか。

まず結論

ウルトラファインバブルの測定は、泡を直接見て数えているわけではありません。水中の微粒子がどう動くか、光をどう散らすかを観測し、そこから大きさと個数を逆算する間接的な方法が中心です。代表的なのは、粒子のランダムな動き(ブラウン運動)を追跡する方法と、散乱光のゆらぎを解析する方法の2系統です。

ただし、ここには原理上の課題が残っています。これらの装置が捉えているのは「1μm未満の何か」であって、それが気泡であることまでを判別できるとは限らない——という指摘が、専門的な議論のなかで繰り返し出てきます。

計測技術そのものが、いまも整備の途上にある。だからこそ公開されている数字は「大小」ではなく「どんな条件で測ったか」から読む必要があります。


◆この記事でわかること

 

  • ・なぜウルトラファインバブルの測定が難しいのか
  • ・測定が答えようとしている3つの問い(大きさ・数・電気的な性質)
  • ・主な測定原理と、それぞれが得意なこと・苦手なこと
  • ・「その粒子は本当に気泡か」という、まだ決着していない論点
  • ・同じ製品でも数値が変わってしまう条件
  • ・スペック表の数字をどう読めばよいか

 


◆なぜ「測ること」がこれほど難しいのか

 

光学顕微鏡では像が結べない領域

ウルトラファインバブルは、ISO 20480-1:2017 という国際規格で「気泡径1μm未満」と定義されています。

この1μm未満というサイズは、可視光の波長と同じかそれより小さい領域に入ります。光を使って像を結ぶ通常の光学顕微鏡では、原理的に輪郭を捉えることができません。

「泡が入っているのに水が濁らない」のは、このためです。マイクロバブル(1〜100μm)の水が白く濁るのとは対照的に、ウルトラファインバブルの水は見た目で判別できません。サイズによる性質の違いは ファインバブル・マイクロバブル・UFBの違いを整理した記事で詳しく扱っています。

「見えないものを、動きから推定する」という発想

そこで測定は発想を切り替えます。粒子そのものの形を見るのではなく、粒子がどう振る舞うかを観測して大きさを逆算するのです。

水中の微小な粒子は、まわりの水分子に絶えず衝突されて不規則に動き回っています。ブラウン運動と呼ばれる現象です。この動きの激しさは粒子の大きさと関係しており、小さい粒子ほど動きが大きくなります。

ならば、動きの激しさを測れば大きさが分かる。これが、現在の主要な測定原理の土台になっている考え方です。


◆測定が答えようとしている3つの問い

 

ひとくちに「測定」と言っても、知りたいことは1つではありません。整理すると、おおむね次の3つに分かれます。

 

問い 測定される量 スペック表での書かれ方
どれくらいの大きさか 気泡径・粒径分布 「平均◯nm」「1μm未満」
どれくらいの数があるか 個数濃度(単位体積あたりの個数) 「1mLあたり◯億個」
表面はどんな性質か ゼータ電位(界面の電気的な状態の指標) 「マイナスに帯電」(数値表記は少ない)

 

重要なのは、この3つは別々の測定であり、必要な装置も違うということです。「サイズを測る装置」で個数濃度がそのまま出るとは限りません。スペック表に3つとも書かれている場合は、複数の測定を組み合わせている可能性が高い、という読み方ができます。


◆方法① 粒子の動きを追跡する

 

粒子軌跡解析法(ナノ粒子トラッキング解析)と呼ばれる方法です。ウルトラファインバブルの測定でよく使われます。

仕組み

試料の水にレーザー光を当てると、微粒子が光を散らして輝点として観測されます。この輝点をカメラで動画として記録し、1つひとつの粒子がどう動いたかを追跡するのがこの方法です。

動きの激しさから、その粒子がどれくらい拡散しやすいかが分かります。拡散のしやすさと粒子の大きさは理論的に結びついているため、そこからサイズを算出できます。

強みと、注意しておきたい点

粒子を1個ずつ見ているので、視野のなかの輝点を数えれば個数濃度も同時に得られます。サイズと数を1台で扱え、粒径がばらついた試料でも分布の形を捉えやすいのが利点です。

一方、観測できるのは光を十分に散らしてくれる粒子だけです。小さすぎるものは輝点として見えず、カウントから漏れる可能性があります。濃度が高すぎる場合は薄める前処理が必要になりますが、薄める操作そのものが泡の状態を変えてしまわないかという論点も残ります。


◆方法② 散乱光のゆらぎを解析する

 

動的光散乱法と呼ばれる方法です。ナノ粒子の粒径測定として、幅広い分野で長く使われてきました。

仕組み

こちらもレーザー光を当てるところまでは同じです。違うのは、個々の粒子を追いかけずに、散乱光全体の明るさの「ゆらぎ」を解析する点にあります。

粒子が激しく動いていれば、散乱光の強さは速く変動します。ゆっくり動いていれば、変動もゆるやかになります。この変動の速さを統計的に処理して、粒径の分布を求めます。

強みと限界

測定が速く、装置も普及しているため、粒径の傾向をつかむ用途に向いています。

ただし、全体の平均的な情報を扱う方法であるため、個数濃度をそのまま出すことは得意ではありません。また、大きな粒子が少数混ざっているだけで結果が引きずられやすい、という性質も知られています。


◆方法③ そのほかの測定原理

 

上記の2つ以外にも、目的に応じて使い分けられる方法があります。主なものを並べます。

 

方法 何を見ているか 得意なこと
粒子軌跡解析法 1粒子ごとのブラウン運動 径と個数濃度を同時に扱える
動的光散乱法 散乱光の強度変動 粒径分布の傾向を速く得る
レーザー回折・散乱法 散乱光の角度依存性 マイクロバブルのような大きめの粒子域
電気的検知帯法(抵抗パルス法) 微細な孔を通るときの電気抵抗の変化 体積を根拠にした粒径・個数の取得
共振式の質量測定 粒子の密度の違い 軽い粒子と重い粒子を区別しうる
電気泳動を用いる方法 電場をかけたときの粒子の動き ゼータ電位の測定

 

このうち「共振式の質量測定」は少し性格が違います。粒子の密度差を扱えるため、水より軽いもの(気泡が該当します)と水より重いもの(固体の粒子)を分けて評価できるのではないかと考えられている方法です。次章の論点に直接つながります。


◆最大の難問——「その粒子は、本当に気泡か」

 

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。これまで見てきた測定方法は、いずれも「水中に浮いている微粒子の振る舞い」を観測しています。粒子の中身が何であるかを直接見ているわけではありません。

つまり装置が返してくる数字は、厳密に言えば「1μm未満の微粒子が、これくらいの大きさで、これくらいの数ありました」という結果です。その粒子が気泡なのか、水道水に元から含まれる微細な不純物なのか、配管や装置から出た微粒子なのかまでは、原理上そのまま区別できません。

この論点は、専門的な議論のなかでも残っている

「計測された粒子を気泡と同定する方法の確立」は、この分野の課題として挙げられ続けているテーマの一つです。実際の測定では、次のような工夫で切り分けが試みられていると説明されます。

  • ・発生装置を通す前の水(ブランク)を同じ条件で測り、差分を見る
  • ・減圧や加圧をして、気泡なら消える/変化するという応答を確認する
  • ・密度の差を扱える測定原理を組み合わせる

 

いずれも合理的な方法ですが、「これで確定」と言い切れる標準的な手順が広く合意されている段階にあるとは言えません。この「解明の途上にある」という状況は技術の弱点ではなく、比較的新しい分野であることの表れだと考えています。技術がどう育ってきたかは ウルトラファインバブルの歴史をたどった記事にまとめています。


◆同じ製品でも、数値は変わる

 

測定原理の問題を脇に置いたとしても、もう一つ大きな論点があります。測定条件が変われば、出てくる数値も変わるということです。

 

条件 数値にどう影響するか
水圧 水圧を利用して気泡を生成する方式では、圧力が変われば発生量も変わる。水圧は家庭ごとに異なる
水温 気体が水に溶ける量が変わるため、気泡の生成と維持に影響する
測定機器・方式 機器によって検出できる粒径の範囲や精度が異なる。方式が違えば単純比較できない
採取位置・タイミング 吐水口からの距離、吐水開始からの経過時間で数値が変わる

 

この4条件が揃っていない数値どうしを比べても、本来は意味をなしません。スペックの読み方については 泡の「数」や「特許」の文字だけで選ぶと後悔する理由で、判断基準としてまとめています。


◆規格の整備と、第三者に測ってもらうという枠組み

 

こうした課題があるからこそ、測定方法の標準化が進められてきました。

ISO/TC 281 という専門委員会

ファインバブル技術には、ISO(国際標準化機構)のなかに ISO/TC 281 という専門委員会が設けられています。この委員会が出した国際規格の第1号が、冒頭で触れた ISO 20480-1:2017(2017年6月22日発行)です。日本国内では JIS B 8741-1:2019 として対応する規格が制定されています。

第1号が扱ったのは用語の定義と測定の一般原則でした。「まず言葉と測り方の考え方を揃えよう」という段階です。その後も測定方法に関する規格の整備が続けられており、現在どんな規格が揃っているかは業界団体が公開している ISO・JIS規格の一覧で確認できます。

第三者に測定を依頼するという選択肢

測定機器は高価で、扱いにも専門性が求められます。そのため 一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA) は ファインバブル計測サービスを公開しています。誰が、どんな条件で測ったのかが明らかであることは、数値そのものと同じくらい重要な情報です。


◆スペック表の数字を、どう読むか

 

家庭で確かめることはできない

ウルトラファインバブルは目に見えないため、家庭で泡の数やサイズを確かめる方法はありません。専用の測定装置が必要です。「水が白く濁って見えるかどうか」で判断することもできません。白く見えるのはマイクロバブル領域の泡であって、ウルトラファインバブルの有無を示すものではないためです。

だからこそ「条件の開示」を見る

確認できないからこそ、公開情報の読み方が重要になります。見るべきは次の順序だと考えています。

  • ・① 気泡径が「1μm未満」と数値で明記されているか
  • ・② 個数を掲げている場合、測定条件が併記されているか
  • ・③ どの測定方法で得た数値か
  • ・④ 誰が測ったのか(自社か、外部か)

 

数値の大小より、条件の有無で読む——これが現実的な向き合い方です。


◆よくある質問

 

Q. 測定方法が違うと、どれくらい数値が変わりますか?

「◯倍変わる」といった一般化はできません。方式ごとに検出できる粒径の範囲も、濃度の扱い方も異なるためです。言えるのは、方式が違う数値どうしは並べて比べる前提を満たしていないということです。

Q. 個数が多いほど良い製品ということですか?

そう単純には言えません。個数が多くても、気泡径が1μm以上に寄っていれば水中に留まりにくくなります。数の多さより、1μm未満というサイズを保てているかのほうが本質的です。

Q. 「気泡かどうか区別できない」なら、測定に意味はないのでは?

意味がないわけではありません。発生装置を通す前後で微粒子の分布がどう変わるかは、比較として有用な情報です。ただしその結果を「気泡が◯個」と言い切れるかは別の話だ、という区別が必要だということです。

Q. ISO規格に沿って測っていれば、性能が高いのですか?

いいえ。ISO 20480-1 は用語の定義と測定の一般原則を定めた規格で、共通の物差しを作ったものです。物差しに沿っていることと、性能が優れていることは別の話です。

Q. フレスカの気泡数は公表されていますか?

現時点で、測定条件とセットにした形での公表はしておりません。条件を伴わない数値は比較材料として機能しにくいと考えているためです。仕様や設置条件については個別にお答えしています。なお効果の感じ方には個人差があります。


◆まとめ

 

✔ ウルトラファインバブルは光学顕微鏡で見えないため、測定は振る舞いからの逆算が中心
✔ 主流は、粒子の動きを追う方法と、散乱光のゆらぎを解析する方法の2系統
✔ 知りたいことは径・個数・表面の電気的性質の3つに分かれ、それぞれ測定が異なる
✔ 測定器が捉えているのは「1μm未満の微粒子」であり、気泡だと確定させる標準的な手順は確立の途上
✔ 水圧・水温・機器・採取条件が変われば数値も変わる
✔ 規格の整備と第三者による計測という枠組みが用意されている
✔ 読むべきは数値の大小ではなく、条件が開示されているか

分からないことが残っている領域について、分かっているふりをしない。それが結果的に、技術への信頼につながると考えています。効果に対する期待値の持ち方については 「効果なし」と言われる理由を検証した記事もあわせてご覧ください。

ウルトラファインバブルフレスカは、住宅の水道元栓に設置する全館型のウルトラファインバブル発生装置です。水圧を利用して気泡を生成する構造のため電源が不要で、フィルターなどの消耗品も前提としていません。

数値をどう扱うかを含め、仕様について気になる点があればお答えします。ご自宅の水圧や配管の状況によって設置条件が変わりますので、導入前の確認も承っています。

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◆参考

 

 


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